ったのに何の不思議があろうかい。それとも仙台の方々は一生お笑い召さらぬかな」
「そのようなこときいているのではござらぬわッ。手前達の何がおかしゅうて馬鹿笑い召さったのじゃ」
「ははん、そのことか。江戸ではな」
「江戸が何だと申すのじゃ」
「弓は射るもの当てるもの、江戸で引いても当らぬものは富籤《とみくじ》位《ぐらい》じゃ。第一――」
「第一何だと申すのじゃ。何が何だと申すのじゃッ」
「おぬし達のことよ。見ればそれぞれ大小二腰ずつたばさんでおいでじゃが、まさかに似せ侍ではござるまいてな」
「なにッ。似せ侍とは何を申すかッ。どこを以って左様な雑言《ぞうごん》さるるのじゃッ。怪しからぬことほざき召さると、仙台武士の名にかけても許しませぬぞッ」
「ウフフフ。その仙台武士がおかしいのよ。ナマリ節《ぶし》じゃかズウズウ武士じゃか存ぜぬが、まこと武士《もののふ》ならば武士が表芸の弓修業に賭物《かけもの》致すとは何ごとぞよ。その昔|剣聖《けんせい》上泉伊勢守《こうずみいせのかみ》も武人心得おくべき条々に遺訓して仰せじゃ。それ、武は覇者《はじゃ》の道にして、心、王者の心を以て旨となす。明皎々として一点の
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