て成敗してつかわそうぞ。とっとと案内さっしゃい」
「なにッ、ふふうむ。直参じゃと申さるるか。身延霊場に参って公儀直参が片腹痛いわッ。御身にお直参の格式がござるならば、当山当院には旗本風情に指一本触れさせぬ将軍家|御允許《ごいんきょ》の寺格がござる。詮議無用じゃ、帰らっしゃい! 五万石の寺格を預かる院代玄長、五万石の寺格を以てお断り申すわッ。詮議無用じゃ、帰らっしゃい! 帰らっしゃい!」
「申したか! ウッフフ、とうとう伝家《でんか》の宝刀《ほうとう》を抜きおったな! 今に五万石を小出しにするであろうと待っていたのじゃ。よいよい、信徒を荒し霊地を荒す鼠賊《そぞく》めを、霊地を預かり信徒を預かる院代が匿もうて、五万石の寺格が立つと申さるるならば、久方ぶりに篠崎流の軍学大出し致してつかわそうぞ。あれなる女はいずれへ逃げ落ちようと、御僧がこれを匿もうた上は、御身が詮議の対手じゃ、法華信徒一同になり代って、早乙女主水之介ゆるゆる詮議致してつかわそうわ。今から覚悟しておかっしゃい。いかい御やかましゅうござった」
無念だが仕方がない。胆《たん》を以て、腕を以て、あの向う傷に物を言わせて、力ずくにこ
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