様と言えば、この街道を上り下り致しまするお大名方一統が頭の上らぬ御前でござります。ついこの先の街道わきに御陣屋がござりまするが、三代将軍様から何やら有難いお墨付とかを頂戴していられますとやらにて、いかな大藩の御大名方もこの街道を通りまする析、御陣屋の御門が閉まっておりさえすれば、通行勝手、半分なりとも御門が開いておりましたならば、御挨拶のしるしといたして御音物《ごいんもつ》を島台に一荷、もしも御殿様が御門の前にでもお出ましでござりましたら、馬に一駄の御貢物《おみつぎもの》を贈らねばならぬしきたりじゃそうにござります。それゆえ、今の二人も慌てて早馬飛ばしましたあたりから察しまするに、御陣屋の容子探りに先駆けしたに相違ござりませぬ」
「なるほどのう、それで分った。それで分った。漸く今思い出したわい。さては、ぐずり松平の御前とは、長沢松平《ながさわまつだいら》のお名で通る源七郎|君《ぎみ》のことでござったか。いや、ますます面白うなって参ったぞ。御前がこのお近くにおいでとは、ずんときびしく退屈払いが出来そうになったわい。素敵じゃ、素敵じゃ。島津七十三万石と四ツに組むには、またとない役者揃いじゃ
前へ
次へ
全48ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング