植]破り致したのも合点が参ろう。ほしいものは珠数屋の大尽の身柄じゃ。さ! 遠慮のう案内せい!」
「そうか! 弥太一が口を割ったとあらばもうこれまでじゃッ。構わぬ、斬ってすてろッ、斬ってすてろッ」
 下知《げち》するや否や、固めの小者もろども、一斉に得物を取りながら、ひしめき立って殺到して来たのを、
「御苦労々々々。刄襖揃えて出迎えか、では、参ろうぞ。どこじゃ。案内せい」
 にんめり笑って、ずいずいと三歩五歩――。やらじと、引き下がって再び殺到しようとしたのを、
「いや風流じゃ、風流じゃ。白刄固《しらはがた》めの御案内とは、近頃なかなか風流じゃ。道が暗い! もそッと側へ参って手引せい」
 莞爾《かんじ》としながら深編笠片手にしたままで、剣風《けんぷう》相競《あいきそ》う間をずいずいと押し進みました。まことに胆力凄絶、威嚇ぶりのその鮮かさ!――まるで対手は手も出ないのです。剣気を合わすることすらも出来ないのです。じりじりと下がっては構え直し、下がってはまた構え直して、徒らに只《ただ》犇《ひし》めいている間を、わが退屈男はいとも自若として押し進みながら、珠数屋の大尽の囚われ先はいずくぞと、ひ
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