ような汚物《おぶつ》がほしゅうて対手したのでないわッ。退屈なればこそあしろうたのじゃ。それなる四人! 急に腰の一刀が鞘鳴りして参った。前に出ませい! 尋常に前へ出ませい!」
「いえ、もう、お四人様はともかく、手前が不調法致しましてござります。そのように御威張り遊ばさずと、お納め下されませ。小判の顔を拝みましたら何もかも丸う納まります筈、では失礼。お四ッたり様もお早く! お早く!」
不埓《ふらち》にも町人は飽くまでも退屈男を、ゆすりかたりの物乞い浪人とでも見下げているのか、小判を足元に投げすてながら、四人の取り巻侍を促して逃げるように姿を消しました。
三
退屈男の憤激したのは言うまでもないことでした。四人も四人ながら、珠数屋の大尽とか言った町人の、許しがたき振舞いは、言語道断沙汰の限りです。凄艶な面に冷たい笑いを浮べながら、道行く人を物色していましたが、丁度通りかかったのは、夕遊びでもうひと堪能して来たらしい京男でした。
「まて、町人」
「へ?……」
「打ち見たところ大分のっぺりと致しておるが、その風体では無論のことに曲輪《くるわ》の模様よく存じておろうな」
「……
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