のように駈け出しました。
第一周は優劣なし!
第二周目も亦同じ。
しかし、第三周目に及んだとき、断然八条流の黒住団七と、大坪流の古高新兵衛の両頭が、三馬身ずつあとの二人を抜きました。つづいて第四周目に及んだとき、さらに両名は二馬身ずつうしろの二人を抜いて、黒白両頭の名馬は、一進一退馬首を前後させながら、次第に第五周目の決勝点に迫りつつあったので、大坪流の古高勝名乗りをうけるか、八条流の黒住勝つか、場内の者等しく手に汗を握ったとき! ――だが、突如としてここに、予想だにもしなかった呪うべき椿事《ちんじ》が勃発したのです。先頭を切りつつあった古高、黒住の両名が、あと半周りで最後の決勝点へ這入ろうとしたその曲り目の一般席前までさしかかった時でしたが、見物席中からであったか、それともうしろの幔幕外《まんまくそと》からであったか、一本の鉄扇がヒュウと唸りを発しつつ、たしかに葦毛の黒住団七めがけて、突如矢のように飛んで来ると、あわやと思ったあいだに、結果は意外以上の意外でした。気がついたものかそれとも偶然からか、狙われた団七がふと首をすくめたので、危うく鉄扇がその身体の上を通り越しながら、丁
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