個は大和《やまと》ながらの床しい手裏剣! 他は南蛮渡来《なんばんとらい》の妖《あや》しき種ガ島――茲に緩急《かんきゅう》、二様の飛び道具同士が、はしなくも命を的に優劣雌雄を決することに立到りましたが、勿論、これは贅言《ぜいげん》を費す迄もなく、その武器の優劣と言う点から言えば、手裏剣よりも短銃に七分の利がある筈でした。けれども、いざその雌雄を争う段となれば、事はおよそ命中率の問題です。命中率の問題とならば言う迄もなく武器を使用するものの手練と技が結果を左右する筈なので、いかさま怪しの非人には、七分の利ある種ガ島があるにはあったが、それと同様に、否、むしろそれ以上に京弥にはまた、技の冴えと手練の敏捷さがありました。
 さればこそ、一つはヒュウと唸りを発して、他は轟然と音を発して、両者殆んど同時に各々の敵を目がけながら放たれましたが、まことに多幸! 千年鍛錬の大和ながらなる武道の技の冴えは、遂に俄か渡来の俄か武器に勝って、危うく弾が京弥の耳脇をうしろにそれていった途端、揚心流奥義の生んだ手裏剣が狙い過《あやま》たずブッツリと怪しい非人の太股につきささりましたので、何条いたたまるべき! ――
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