たえ青ざめながら、あわてて血の足跡をもみ消しました。
しかし、おそい。
名人の目は、すでに早くいなずまのように光って、ぴょんぴょんと散っているもみじの跡を追っていたのです。――跡は、咲いたように赤く畳をたどって、がっちりと大仏壇の乗っている板床の上で終わっているのでした。
じっと見ると、その板床の上に、ねっとりとした血のぬめりがあるのです。しかも、その血のぬめりは、大仏壇の下から流れ出た血のたまりでした。下段いっぱいにこしらえた戸だなの戸の合わせめから、ちょろちょろと糸を引いて流れ出ているのです。
ちゅうちょなく、名人の手は戸だなの戸にかかりました。しかし、それと同時に、おもわずぎょっと身を引きながら、立ちすくみました。
ぬっと手がのぞきました。顔がのぞきました。足がのぞきました。折り曲げたように死体を折って、戸だないっぱいに押し込めてあったのです。
しかも、その顔!
すばりとみごとに片耳を削って、深く肩まで切りさげられてはいたが、顔は、血によごれたその顔は、まぎれもなくさきほどのあの青月代《あおさかやき》の町人でした。
やはり、ふたりだったのです。
ひとりではない、
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