ならばふたりかと思うと、そっくりそのままに似すぎているところが不思議でした。伝六といっしょに飛んでいったのも不思議なら、いったかと思うと月代が変わって、のぞいたというところを推しはかってみると、まさしく同一人のように思えるのです。
「迷わしゃがるな。めんどうだが、手間をかけて、しっぽをつかむより法はあるめえ。両方の近所へいって、人の口を狩り集めてきな」
「聞き込みですかい」
「そうよ。人の毛は肉の下からはえてくるんだ。気ままかってに取りはずしのできる品じゃねえ。ひとりかふたりか、おおぜいの目を借りたら正体もわかるにちげえねえから、ひとっ走りいって洗ってきな」
「よしきた。ちくしょうめ。たっぷりとまゆにつばをつけていってやらあ。どこでお待ちなさるんです。いずれはどこかそこらの食い物屋でしょうね」
「お手のすじさ。おいらが食い物屋と縁が切れたら冥土《めいど》へちけえよ。あの向こうの突き当たりだ。オナラチャズケ、ウジリョウリとひねった看板が見えるじゃねえか。あそこにいるから、舞っておいで」
夕ばえ近い町を、伝六は左へ、名人は右へ、――お奈良《なら》茶漬《ちゃづけ》宇治料理とかいたのれんが、
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