えどうしたんだ。野郎たちゃ全然別人か」
「――のようなところもあるんで、ふたりかと思ったら」
「やっぱりひとりか!」
「――のようなところもあるんですよ。音蔵のうちへ駆けこんでいったら、裏口からもばたばたとあの町人らしい足音が飛びこんできやがってね、と思ったら、表口へぬっと顔が出たんで、さては青月代《あおさかやき》かとよくよくみたら黒い頭なんだ。あの御家人めがにったりやって、なにしに来やがったとにらみつけたんでね、こいついけねえと思って、大急ぎにお駒のうちへ飛んでけえったら、いま見たとおりまたばたばたと裏口から駆け込んできやがって、にやにややっていたんです。こんな気味のわるいこたア二つとありゃしねえ。つらは同じなんだ。年かっこうも同じなんだ。男っぷりもそっくりなんだ。毛がはえたり、なくなったり、飛んであるくうちに月代《さかやき》が青くなったり、黒くなったりするなんてえきてれつは、弘法様だってご存じねえですよ。あっしゃ震えが、ふ、震えが出てならねえんです……」
 いかさま奇怪でした。二町や三町の道を走るうちに、伸びたり消えたり、自由に月代《さかやき》が変わるはずはないのです。しかし、それ
前へ 次へ
全39ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング