んでいるだろうと思っていたのに、岩吉店の中ほどで見つけたお駒のその住まいは、表付き、中のぐあい、うって変わってこざっぱりと、なにもかも整っているのです。
 ばかりか、ぬっと上がっていった右門も伝六も、等しくおどろきに打たれて、あっと目をみはりました。
 じつにそっくり、じつにうり二つといいたいほどもそっくりそのままの男が、そっくりなかっこうをして、お駒の腰のあたりをかぐようにしながら、手まくらも楽そうに長々と寝そべっていたのです。年も同じように三十三、四、顔だちもまた苦み走ってちょっといい男の、背もそっくり、肉づきもまたそっくり、ただ変わっているところはその月代《さかやき》のあるなしと、武士と町人との相違でした。あっちは黒々と伸びていたのに、こっちは青々とそりあげて、あっちは見るからにふてぶてしい御家人ふうだったのに、こっちは鳶《とび》の者か職人か、こざっぱりといなせなあにいふうでした。
 しかも、同じようにむっくり起きあがると、同じようにからみついてきたのです。
「どこの野郎だ。なにしに来やがったんだ」
「…………」
「黙ってぬっとへえってきやがって、だれに断わったんだ」
「似たよう
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