だ。匕首《あいくち》をな。届けたら、けさになって豊太が刺し殺されていたんだ。どれもこれも、おかしなことばかりじゃねえかよ。争って罪を着たがったも不審、娘がドスを届けたも不審、しかも娘は婿取りだというんだ。男のほしい娘だとな。――どうだい、おやじ。これだけ筋を立ててたたみかけりゃ、もうよかろう。白状しな! 白状を!」
「…………」
「いわねえのかッ。じれってえな! おたげえに年の瀬が迫って気が短くなっているんだ。いわなきぁ、ぎっちょの梅五郎と突き合わせてやろうよ。めんどうだ。伝六! あの野郎をしょっぴいてきな!」
「いいえ、も、も、申します。恐れ入りました」
ついにどろを吐いたのです。
「お察しのとおり、千百三十両はこの新助が三年かかってちびりちびりとかすめてためた大穴でござります。いずれは店も出さねばならぬ、その用意にと長年かかってかすめたんでござりまするが、あそこへ店を出すといっしょに大穴がばれたんでございます。それを知って、罪を着ようといいだしたのが、あの豊太と梅五郎のふたりでござんした。ふたりともいまだにひとり身、娘は婿取り、罪を着る代わりにおれを婿におれを婿にといいだしたのが
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