みなくらい穏やかにやんわりとまずくぎを刺しました。
「さっき妙なことをいったな。不審なところがあったらお白州へでもご番所へでも参りますといったけえが、忘れやしめえな、新助」
「な、な、なんでござんす!」
「急に目いろを変えるな! その不審があってしょっぴいたんだ。娘からさきにとっちめてやろう。竹! 前へ出い!」
「…………」
「なにを青くなって震えているんだ。あいきょうが元手でござんす、こういう招きねこがおるんでござんすと、親バカの新助が自慢したおまえじゃねえか。度胸があったら、このおいらの前でもういっぺんあいきょうをふりまいてみなよ」
「いいえ、そんなことは、そ、そ、そんなことは」
「時と場合、出したくてもこの恐ろしい証拠を見せつけられては、肝がちぢんで出ねえというのか! ――そうだろう。ようみろい、この証拠を!」
「な、な、なんの証拠でござんす。証拠とはどれでござんす」
「このドスだ」
「えッ……!」
「それから、この牢番の青っぽうだ。みんなべらべらと口を割ったぜ。こいつを左ぎっちょの梅五郎さんにこっそりと届けてくださいまし、そうしたらなんでもききます、今晩でもおいでくださいましと
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