ります……」
「よし、わかった。もうそれで聞くにゃ及ばねえ。伝六、また駕籠だ。おめえひとりがよかろう。あの親子をしょっぴいてきな」
「親子!」
「今のあの鈴新親子を引いてこいというんだ。これだけの動かぬ証拠がありゃ、もう否やはいわせねえ。しかし、おめえは口軽男だ、うれしくなってぱんぱんまくしたてたらいけねえぜ。ちょっとそこまでと別口のおせじでもいってな、のがさねえように、うまく引いてきな」
「心得たり! ちきしょうめ。こういうことになりゃ、伝あにいのおしゃべりじょうずは板につくんだ。たちまち引いてくるから、お茶でも飲んでおいでなせえよ」
忙しい男です。
ぴゅうぴゅうと、うなりをたてて飛んでいく姿が見えました。
遠いところではない。
二杯とお茶を飲むひまのないまもなくでした。
エへへ、という声がしたと思うといっしょに、その伝六がなにをべらべらやっているのか、しきりにさえずりながら、新助お竹の親子を手もなく引いてきたのです。
「さあ来たんだ。べらぼうめ! 神妙にしろ。得意のむっつり流で、ぱんぱんとやっておくんなせえまし!」
突き出すように押してよこしたふたりの前へ近づくと、ぶき
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