一丁目がちけえんだ。じたばたするない!」
 血いろもなくうち震えている娘をはねのけるようにしてまずうしろへ押しやっておくと、ぬっと歩み寄ってあびせました。
「化けの皮はいでやろう! こうとにらみゃ万に一つ眼の狂ったことのねえおいらなんだ。うぬ、男だな!」
「何を無礼なことおっしゃるんです! かりそめにも寺社奉行《じしゃぶぎょう》さまからお許しのお富士教、わたしはその教主でござります。神域に押し入って、あらぬ狼藉《ろうぜき》いたされますると、ご神罰が下りまするぞ!」
「笑わしゃがらあ。とんでもねえお富士山を拝みやがって、ご神罰がきいてあきれらあ。四の五のいうなら、一枚化けの皮をはいでやろう! こいつあなんだ!」
 ぱっと身を泳がせると、胸を押えました。
 乳ぶさはない。
 あるはずもないのです。
 身をよじってさからおうとしたのを、
「じたばたするねえ。もう一枚はいでやらあ。こいつアなんだ」
 草香流片手締めで締めあげながら、ぱっと斎服をはぎとりました。三蓋松《さんがいまつ》のあの紋が下着に見えるのです。
「幔幕《まんまく》も三蓋松、これも三蓋松、大御番組のあき屋敷に脱ぎ捨てた着物の紋ど
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