がら、艫音をころして岸伝いにひたすら上へ上へと急ぎました。
永代橋をくぐって新大橋、新大橋をくぐって両国橋、やがてさしかかってきたのは、なぞのあの五人をつるしてあった首尾の松です。
十日の月が雲をかぶって、大川一帯はおぼろ宵《よい》の銀ねずみでした。
前後しながらのぼっていった奇怪な舟は、その首尾の松へさしかかると、七艘ともに、するりと舳《へさき》を右へ変えて、そこの横堀《よこぼり》を奥へ、ぐんぐんと進みました。
右は松前|志摩守《しまのかみ》、左は小笠原《おがさわら》家の下屋敷、どちらを見ても、人影一つ灯影《ほかげ》一つ見えない寂しい屋敷ばかりで、突き当たりはまた魔の住み家のような、広大もない本所お倉の高い建物なのです。
突き当たって右へ折れると、舟のはいっていったところがまたいかにも奇怪でした。寺のようにも見えるのです。お宮のようにも見えるのです。見ようによっては御殿のようにも見えるのです。その不思議な建物の中へ、右の水門から一艘、左の水門から一艘というふうに、時をおいては順々に姿を消しました。
「はてね。お待ちなさいよ」
しきりと首をひねっていたが、たまには伝六も金的
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