かに大川を上へ上へとのぼりました。
つづいてまたひとり。
これは二十二、三のあだっぽい鉄火者でした。
あとから女がまたひとり。
入れ違いに、やはり女がまたひとり。
最後に出てきた女は、まさしくどこかのお屋敷勤めの腰元らしい中年増《ちゅうどしま》です。
名人右門の目は、電光のように輝きました。
いってらっしゃい。ごゆっくりどうぞ、と意味ありげにいった声も奇怪です。出てきた七人が七人ともに女ばかりだったのも奇怪です。
そのうえに、舟はいっせいに上へ上へと前後して川をのぼりました。
しかも、舟にはしめなわが張ってあるのでした。
船頭の腰にもまた奇怪なことにしめなわが見えました。
船頭!
船頭!
首尾の松につるしてあったのも、まさしくその船頭なのです。
「舟だ。急いで一丁仕立てろッ!」
「がってんでござんす」
車輪になって伝六が見つけてきた二丁艫《にちょうろ》の伝馬《てんま》に飛び乗ると、
「あの七艘じゃ。見とがめられぬよう追いかけろッ」
ぴたりと舟底に身をつけて、見えがくれにあとを追跡しました。
それとも知らず、七艘の不思議な舟は、不思議な女をひとりずつ乗せな
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