かに大川を上へ上へとのぼりました。
 つづいてまたひとり。
 これは二十二、三のあだっぽい鉄火者でした。
 あとから女がまたひとり。
 入れ違いに、やはり女がまたひとり。
 最後に出てきた女は、まさしくどこかのお屋敷勤めの腰元らしい中年増《ちゅうどしま》です。
 名人右門の目は、電光のように輝きました。
 いってらっしゃい。ごゆっくりどうぞ、と意味ありげにいった声も奇怪です。出てきた七人が七人ともに女ばかりだったのも奇怪です。
 そのうえに、舟はいっせいに上へ上へと前後して川をのぼりました。
 しかも、舟にはしめなわが張ってあるのでした。
 船頭の腰にもまた奇怪なことにしめなわが見えました。
 船頭!
 船頭!
 首尾の松につるしてあったのも、まさしくその船頭なのです。
「舟だ。急いで一丁仕立てろッ!」
「がってんでござんす」
 車輪になって伝六が見つけてきた二丁艫《にちょうろ》の伝馬《てんま》に飛び乗ると、
「あの七艘じゃ。見とがめられぬよう追いかけろッ」
 ぴたりと舟底に身をつけて、見えがくれにあとを追跡しました。
 それとも知らず、七艘の不思議な舟は、不思議な女をひとりずつ乗せな
前へ 次へ
全56ページ中45ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング