は必死の抵抗をしているのです。
 右門のまなこが、事の不審に当然のごとく光りました。
「さかんにおやりじゃな」
「なにッ。でしゃばり者が参ったな。せっかくだが、このアナは敬四郎がひと足先じゃ。指一本触れさせぬぞ。じゃまじゃ。どかっしゃい」
「おじゃまなら、どきもいたしましょうが、これはいったいなんのまねでござる」
「いらぬおせっかいじゃわい!」
「いいえ、いらぬおせっかいじゃござんせんよ。綾坊、右門のおじさんがお越しじゃ。もうどきな」
 聞いて、横から口を入れたのは、いましめをうけている父親です。
「ようお越しくださいました。子どもはいじらしいものでござんす。あっしが下手人でもないのに下手人だと、このとおりおなわにされましたんで、だんなさまを呼んでくるまでは手をつけさせぬ、始末もさせぬと、敬四郎だんなをてこずらせているんでござります。そのふろおけの中が――」
「死骸《しがい》か!」
「そうでござんす。家内めが変わり果てた姿になっております……よくお見調べくださいまし」
 近寄るまえに小娘はさかしくもおけの上からはいおりると、右門の狂わぬ検証を一刻も早く待ちのぞむかのように、重いふたをけ
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