ろと涙をおとしながら、しくしく泣きだしました。おどろいたのは伝六です。
「ど、ど、どうしたんだ。気味のわるい子だな、おまえは。おらが伝六のおじさんだからって、なにも泣くこたアねえじゃねえかよ」
「悲しいんだ。悲しいから泣くんだ。早くちゃんを助けておくれよ」
「なに、ちゃん? ちゃんがどうしたというんだ」
「かあやんが、かあやんがな、けさふろおけの中で死んでたんだ。だから、ちゃんが下手人だといって、おなわにされたんだよ」
「さあ、いけねえ! えらいことになりゃがったな。いってえ、だれがおなわにしたんだ」
「顔にいっぱい穴のあるお役人だよ」
「なにっ、あば敬か! ちくしょうッ、さあ、いけねえぞ! さあ、いけねえぞ! いってえ、そりゃいつのことなんだ」
「たった今なんだよ。けさ起きてみると、かあやんがいつだれに殺されたか、死んでたんだ。だから、うちじゅう大騒ぎになって、近所のつじ番所へ知らせにいったら、どこできいたか顔に穴のあるそのお役人がすぐはいってきてな、ふたことみこといばっておいて、いきなりちゃんになわをかけてしまったんだ。ちゃんは、おらのちゃんは、そんな鬼のちゃんじゃねえ。だから、だ
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