には長い竹ざおを持っているのでした。飛び出してさっと馬の行く手に立ちふさがると、舌を巻きたいほどにも機転のきいた少年なのでした。パカパカと矢のように駆け近づいてくる馬の鼻さきめがけて、手にしていた青竹をひゅうひゅうと打ちふりました。
「な、な、なにするんだ! どきな! どきな! けとばされたらあぶねえじゃねえか!」
「おじさんこそあぶないよ。馬を止めてやるんだ」
「バカいうない! おらに止まらねえものが、おまえなんぞに止められてたまるもんか! そら! そら! あぶねえじゃねえかよ」
その声の終わらぬうちに、ぴたりと馬が止まったから不思議です。
「へえ……偉いね、ちんぴら。止まったね」
「止まったろう。おじさんみたいなしろうとが乗るもんじゃないよ、あぶないからね……」
「何いやがるんでえ。おれがしろうとだかくろうとだか、おまえ知らねえじゃねえかよ」
「知ってるよ。おじさんは伝六のおじさんだろう」
「いやなことをいうね。どうして、おらが伝六のおじさんだってえことを知ってるんだい」
「知ってるから知ってるんだよ。だから……だから……」
ふいっと顔を伏せると、不思議な少年は、とつぜんぽろぽ
前へ
次へ
全44ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング