たとみえて、欲深の女でござります。かどわかして売った金を取り返しにでも来るだろうと思い違えましたものか、ご亭主に小判の包みを埋めてこいとか隠してこいとか、しかりつけるようにいって表へ出しましたゆえ、様子をうかがっておふろへはいったところを見すまし、窓からふたり忍びこんで、わたしが首を、貞坊がお乳を押えて絞め殺したのでござります。あいつは、あの鬼女はきっと、みんなを、たくさんな子どもを、あたいたちみたいにさらっては売っているんだ。みんなのために、かわいそうなみんなのために殺してやったかと思えば、悲しいことはございませぬ。どこへでも参ります……連れていってくださいまし。参ります……。参ります……」
いじらしくもみずから両手をうしろに回すと、おのれたちの悲しい運命を嘆こうともせずに、仲間の角兵衛たちへ泣きぬれた涙の中からさみしい別れの笑《え》みを送りつつ、とぼとぼと歩きだしました。
しかし、これをなわにするような右門ではないのです。
「仲よくふたりしてこれへお乗り……」
用意の駕籠へのせると、黙々として川一つ越えた伝馬町《てんまちょう》の不審牢《ふしんろう》へ伴いました。
敬四郎がそ
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