の群れから離れて、暗いあんどんの灯影《ほかげ》の下に、身を引きそばめながら、抱き合うようにして震えている子どもがいるのです。
それもふたり!
きらりと名人の目が光ったかと見るまに、静かに歩みよると、人情こまやかな声がおびえているその顔のうえにふりそそぎました。
「おじさんが来たからにゃ心配するなよ。慈悲をかけてあげましょうからのう。あのふろおけの下手人は、おまえたちだろうな」
「…………」
「泣かいでもいい。さぞくやしかったろう。ふたりともあの女にかどわかされて、角兵衛に売られたんでありましょうのう。ちがうか。どうじゃ」
わっとしゃくりあげてふたりとも泣きじゃくっていたが、温情あふれた名人のことばに、子ども心がしめつけられたとみえるのです。
「ようきいてくれました。おじさんなら隠さずに申します。下手人は、あの下手人は……」
「やはりおまえたちか!」
「そうでござります。おっしゃるとおり、あたいたちはあの女にかどわかされたんでござります……」
「どこでさらわれた」
「浅草の永徳寺でござります。あたしたちふたりとも、親なし子でござります。親なし子だから、永徳寺にもらわれて、六つのとき
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