どんな音か聞くんだ。こうしてつぼを伏せるのかい」
ごろりと腹ばいになると、あざやかな手つきで、ガラガラポーンと伏せました。
おどろいたのは伝六です。
「冗、冗、冗談じゃねえや、あごはどうしたんですかよ、あごは! いくらばくちはお上がお目こぼしのわるさにしたって、お番所勤めをしている者が手にするってえ法はねえですよ。場合が違うんだ、場合が! 何をゆうちょうなまねをしているんですかよ!」
聞き流しながら名人は、無心にガラガラポーンと伏せて、さえたそのつぼ音を無心に聞き入りながら、心気の澄んだその無心の中から何か思いつこうとでもするかのように、しきりともてあそびつづけました。
ポーンと伏せてあけると、コロコロところがって、ピョコンと賽《さい》が起き上がるのです。
せつな。
むくりと立ち上がると、莞爾《かんじ》とした笑《え》みのなかからさわやかな声が飛びました。
「なアんでえ。さあ、駕籠《かご》だ。表のやつらにしたくさせな」
「ありがてえ、眼《がん》がつきましたかい」
「大つきだ。いたずらもしてみるものさ。このさいころをよく見ろよ。ころころところがってはぴょこんと起きるじゃねえか。
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