る暗い稼業《かぎょう》です。女衒とても、もとより芳しい稼業ではないが、女の前身にかどわかしの暗い影があるというにいたっては、じつに聞きのがしがたいことでした。しかも、盗んでさらって売ったものは、頑是《がんぜ》ない子どもだというのでした。
名人の手は久方ぶりで、そろりそろりといつのまにかあごのあたりをさまよいはじめました。
子どものかどわかし!――どういう子どもをどこへ売ったか、大きななぞの雲が忽焉《こつえん》として目の前に舞い下がってきたのです。
女の前身には暗い影があった。
かどわかしという人の恨みを買うにじゅうぶんな陰があった。
その女がふろおけの中で絞め殺された。
死体には子どものつめ跡がある。
ふろ場の羽目にも跡がある。
やはり、子どもの手の跡なのだ。
忍び込んだところは、高い窓なのだ。
その高い窓から苦もなくはいったとすると、よくよく身の軽い子どもにちがいないのです。
身軽な子ども……?
身軽な少年…?
なぞを解くかぎはそれ一つである。女は子どもをさらって、どういうところへ売ったか。身軽な子どもと売った先との間のつながりを見つけ出したら、このあやしき
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