つき
右まさに受け取りそうろうなり
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]佐久間町 駕籠留《かごとめ》
[#天から1字下げ]増屋《ますや》弥五右衛門《やごえもん》殿
金くぎ流でそう書いた受け取りなのでした。
「なるほど、少し変な受け取りだな。どこから見つけ出したんだ」
「この大福帳にはさんであったんですよ。伝六も知恵は浅いほうじゃねえが、まだ駕籠屋の受け取りてえものを聞いたことがねえ。だいいち、この金高も少し多すぎるじゃござんせんかよ。一両二分ってえいや、江戸じゅう乗りまわされるくれえの高なんだからね。それに、この夜中増し金付きってえただし書きも気にかかるじゃござんせんかよ。夜中にでも乗りまわしたにちげえねえですぜ」
「偉い。おまえもこの節少し手をあげたな。捕物《とりもの》の詮議《せんぎ》はそういうふうに不審を見つけてぴしぴしたたみかけていくもんだよ。佐久間町といや隣の横町だ。宿駕籠にちがいない。行ってみな」
糸がほぐれだしたのです。
主従の足は飛ぶようでした。案の定、佐久間町の通りかどに、油障子で囲んだ安駕籠屋が見えるのです。
「だれかおらんか」
「へえへえ。ひとりお
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