のおしゃべりゃ人並みぐれえなんですよ。しゃべりだしゃこれでずいぶんとたのもしいんだ。どっちの風向きがどう変わったんですかい」
「あきれたやつだ。これをよく見ろい」
「なるほど、あるね。手だね。もみじのお手々というやつだ。まさに、まさしく手の跡だね」
「だから、捜すんだよ」
「へ……?」
「あのおやじが七百両背負って、ゆうべどこへ出かけていったか、そのなぞの解けるようなかぎを捜し出すんだよ。うちじゅう残らず調べてみな」
「じきそれだからな。この手の跡が七百両するんですかい。もうちっと話の寸をつめていってくれなきゃアわからねえんですよ」
「しようのねえやつだ。このとおり不思議な手の跡がこんなところに残っているからにゃ、下手人の風向きもこっちへ変わったじゃないかよ。変わったとすりゃ、かわいそうなあの親子を助け出さなきゃならねえんだ。しかし、相手は敬四郎だ。尋常なことでは嫌疑《けんぎ》を晴らすはずアねえんだ。だから、敬四郎がぐうの音も出ねえように、おやじがゆうべどこへいったか動かぬ足取りを洗いたてて、攻め道具にしなきゃならねえんだよ。おやじの嫌疑が晴れりゃ、子どもたちの嫌疑の雲の晴れる糸口もお
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