の押し窓のちょうど真下になっているのでした。
窓の長さは三尺、幅は一尺あるかないかの狭いものでしたが、子どもなら出はいりができないことはないのです。
念のために、伸び上がって押しあけながらよく見ると、すすほこりが着物かなぞですれたらしく、さっとはけめがついているのでした。
疑いもなく、ここからふたりの子どもが忍び込んだに相違ない。忍び込んだとするなら、うちのあのきょうだいたちがわざわざ外から忍び込むはずはないから、よそのほかの子どもにちがいないのです。手の跡から判断すると、窓からはいって、羽目板に手を突いて、ひらりと身軽に飛びおりたものにちがいない。
身軽な子ども……!
身軽な少年……?
「ウフフ、そろそろ風向きが変わったかな」
「え? え? なんですかい。いろけがよくなったんですかい」
「うるさいよ。おまえ今、もうひとことも口をきかないといったじゃないか、おまえさんなぞにしゃべってもらわなくとも、こっちゃけっこう身が持てるんだから、黙っててくんな」
「ああいうことをいうんだからな。薄情っちゃありゃしねえや。いっさいしゃべらねえ、口をききませぬといっておいてしゃべって、あっし
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