されるな! 待たれよッ」
「じゃまするなッ。敬四郎が手がけたあなじゃ! どかっしゃい! つじ番所のやつら! 早くこの死骸をかたづけろ」
名人の制止も聞かばこそ、敬四郎はわめき叫ぶふたりの子どもになわを打たせて、父親ともども、群衆のどよめきを押し分けながら、揚々としてひったてました。
3
「ちッ、なんて人がいいんだろうな。せっかく眼《がん》をつけて、ホシを見つけてやって、へえどうぞと、のしをつけてくれてやるバカがありますかよ。当節はとびだっても、こうぞうさなく油揚げをさらえねえんだ。人がよすぎてむかむかすらあ」
悲憤やるかたなかったとみえて、伝六の空もようは大荒れです。
「やい! 何がおもしれえんだ。ぽかんと口をあけて見てたって、一文にもなりゃしねえぞ、かせげ、かせげ、うちへ早く帰ってかせぎなよ。やじうまじゃ乗り手もありゃしねえや、べらぼうめ。――ね、ちょいと、これからいったいどうするんですかい。長年苦労をしただんなとあっしの仲なんだからね、いやみなこたアいいたくねえが、いまさら指をくわえていたって始まらねえんだからね、お人よしの直るお灸《きゅう》でもすえに行ったほうが
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