まさしくこれは絞め殺したものでござるぞ。しかし、下手人は子どもじゃ」
「なに、子ども! 子どもが、子どもがこんな大女を絞め殺せるものか、バカな」
「さよう、ひとりならばむずかしいかもしれぬが、下手人はふたりでござる。論より証拠、この二カ所のつめ跡をよく見られよ」
 莞爾《かんじ》と笑って、名人は首筋と乳ぶさの上との二カ所を指さしました。
 なるほど、二カ所ともに、はっきりとつめの跡が見えるのです。ぐいと両手で力まかせにひとりが首を絞めたらしく、首筋にふたところ、ひとりが急所の乳ぶさを押えつけていたらしく、むっちりとした左右のそのふくらみの上に、ぶきみな五本のつめ跡がはっきりと見えました。
 しかも、小さい。いずれもそのつめ跡は、ひと目に子どもの指と思われるほど小さいのです。
「そうか! 子どもか! さては――」
 当然のごとく疑いのかかったのは、ふたりのきょうだいでした。まっさおになって震えていたふたりをにらめつけると、敬四郎の声と手がいっしょに飛びかかりました。
「うぬらだ。うぬらだ。うぬらがまま子根性でやったにちがいない! 直九! なわ打てッ」
「バカな! まだ早い! 手荒なことを
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