「何しに、どこへいった?」
「そればっかりは……」
「白状できぬというか。疑いが濃くなるばかりだのにのう。子どもたち、おまえら知っておるだろう。ちゃんはどこへいった?」
「あの、あの……」
言いかけたのを、横から父親がけわしくねめつけました。
何か深い秘密があるらしいまなざしなのです。
「みろ! おやじめ、七百両に目がくらんで、なんぞ細工したに相違ないわい。この敬四郎に授かったてがらじゃ、指一本触れてもらいとうない。直九! じゃまされぬうちに、この死骸も早く取りかたづけろ」
「いや、おてがらはけっこうじゃが、まだ少々お早いようじゃ。待てッ、直九!」
得意顔に命じて敬四郎が手下の者たちに始末させようとしたのを、にこやかに微笑して制すると、名人がやんわりと右門流をほのめかしはじめました。
「おりおりは、目ものう、すす払いをするものじゃ。では、いま一つ承るが、敬どの、これなる女の死因をお見破りかな」
「死因? 死因なぞ、死因なぞは、このおやじを締めたらわかるわい。いらぬじゃまだてせずと、どかっしゃい!」
「アハハ。弱りましたな。それゆえ、ときおりは目のすす払いしたらどうかと申すのじゃ。
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