らでござんす」
「なに! かわいかったから?――ほほうね。じゃ、ねたみ心からじゃなかったんですね。あんたはその年でおひとり身、お冬さんは年下なのに、うれしいおめでたごとになったんで、女心のねたましさから、ついふらふらと何かじゃまを入れたんじゃないかと思いましたが、そうじゃなかったんですね」
「とんでもない。ただもう、ただもうかわいかったからなのでござります。と申しただけではご不審にお思いでござりましょうが、ご存じのように、わたくしどもは母のない姉妹、それゆえに自身の身が年とるのも忘れ、ただもうあの子がいじらしさ、かわいさに、いくつかあった縁談も断わりまして、きょうが日までこのわたくしが手しおにかけてきたのでござります。さればこそ、あの子にこのたびの縁談がありましたときにも、だれよりわたしが喜んで、したくのこと日取りのこと、みんなわたくしがめんどうをみたんでござりまするが、女の心というものはわれながら解せませぬ。だれよりも喜んでおりながら、式の晩になってお化粧をしてやろうと、いっしょにあの子とお湯を使っておりましたら、急にあの子を人手に取られるのが惜しくなりたのでござります。こんなかわい
前へ
次へ
全48ページ中45ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング