ぞの根が深いだけに、それを解きほどくべき詮議のつるもまたじつに多種多様なのでした。
「ウフフ。ちっとこれは知恵がいるかのう……」
うち考えながら、大川べりをあちらこちらとさまようていたが、いく本かのつるの中から、すばらしい一本が見つかったとみえるのです。
とつぜん、意外な声が放たれました。
「寝るか」
「へ……?」
「うちへ帰って寝ようじゃないかといっているんだよ」
「ちぇッ。つがもねえ、何をもったいつけていうんですかい。夜が来りゃみんな寝るに決まってるんだ。わざわざおおぎょうに断わらなくてもいいんですよ。足もとがふらふらしていらっしゃるが、日ごろ偉そうなことをおっしゃって、だんなもあのべっぴんの雪の膚を見てから、脳のかげんがちっとおかしくなったんじゃござんせんかい」
「やかましいや! 早く船の勘考でもしろい」
夕だちあとのすがすがしい星空の下を八丁堀までずっと舟。帰るが早いか、ほんとうにそのまま青蚊帳《あおかや》の中へ、楽々と身を横たえました。
3
しかし、その翌朝が早いのです。
東が白んだか白まないかにむっくり起き上がると、不思議なことにも手ぬぐい片手にこち
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