不審あって江戸より追っかけてまいったもの。もとより、お改めのうえお通しでござろうが、人相風体、通行申し開きの口上はどのようでござった」
「どのようもこのようもござらぬわい。年のころは五十がらみ。御用|鍛冶《かじ》、行徳助宗、将軍家|御台所《みだいどころ》のお旨をうけ、要急のご祈願あって、高野山へお代参に参る途中じゃ、とこのように申し、御台さまのお手形所持いたしおったゆえ、否やなく通行許したのじゃ」
「なに! お手形まで所持しておったとのう!……」
 おどろくべき早手まわしでした。みずから果てたあの岩路こそは、御台所お付きの腰元なのです。事露見と察して、早くも父を高野へ落とすべく、御台所お手形までももらいうけてきたものにちがいない。問題はお槍です。
「長柄物、所持してはおりませなんだか」
「長柄物?」
「槍でござる」
「おらぬ、おらぬ。そのようなもの目にかからば、おきてお定め書きにもあるとおり、証文の吟味もうけるべきはず、いっこう見かけなんだわい」
「それはちと奇態、なんぞ変わったところ、目にとまった覚えござらぬか」
「さようのう……いや、あるある、一つ覚えがござるわい。駕籠の肩棒が並み
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