ご存じならば、お坊主衆にひとりぜひ用がござります。おくびょう者でひときわ口やかましい者、お心当たりござりませぬか」
「あるある! お鳥係りに可賀《べくが》と申すおしゃべり者のいたってひょうげたやつがひとりおるわい。用ならば、今からすぐにでもお引き合わせつかまつるぞ」
「では、さっそく――」
「えへへ。うれしいことになりやがったね」
もうここから鳴りだしてもよかろうと、たちまちお株を始めたのは、こっちのおしゃべり者でした。
「兄弟に用があるとはたのもしいですよ。やっぱり世間は広いやね。おしゃべり者はあっしばかりと思っていたのに、大奥にもそんなたのもしいのがいるとはうれしいね。善は急げだ。死ぬまでにいっぺん大奥の女護の島へお参りしてえと思ってたんだからね。なろうことなら、年の若いべっぴんからお引き合わせを願いますよ」
やかましくさえずりだしたのをしりめにかけて、右門、平七のふたりは一ノ橋ご門から左へお薬園の前に抜け、ぐるりと回ってご本丸大奥外のお番屋を訪れました。ここはいわずと知れた大奥警備の番士たちの詰め所です。
あきべやを借りうけて、伝六ともども待ちうけているところへ、まもなく三
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