目のくばり、他のお濠方と違って、どことなく心きいたところが見えるのです。
「ご貴殿は?」
「なんじゃ」
「やはり蔵人《くらんど》様のお組下でござりまするか」
「さよう。三宅平七という者じゃ。御用あらば、いかほどなりとお力になってしんぜまするぞ」
「なによりでござります。事は密なるが第一。蔵人様、しばらく三宅|氏《うじ》をお借り申したいが、いかがでござりましょう」
「異存のあろうはずはない、いかようなりと」
「かたじけのうござります。右門、これをお引きうけいたしましたからには、必ずとも変事のなぞ解いてお目にかけますゆえ、なにとぞお心安う。――では、三宅どの、ちとお耳を拝借願いとうござりますゆえ、あちらへお越し願えませぬか」
いぶかりながら松の木陰へついてきた三宅平七を見迎えると、不意に異なことを尋ねました。
「貴殿ならばご城内のこと、奥も表もあらましはお通じのはず、お知り人もたくさんござりましょう。もしや、だれか大奥お坊主衆におちかづきはござりませぬか」
「あるとも! われわれお濠方はお庭番同様、ご城内の出入りはお差し許しの身分ゆえ、お城坊主衆ならば残らずちかづきじゃ。何かご用か」
「
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