ずからその手順がたつというものである。
第一は、まず殺された若侍が何者であるか、その身もと詮議でした。
第二は、扇子と懐紙入れの持ち主が何者であるか、その穿鑿《せんさく》でした。あるべきはずのないところに、あるべきはずのない品が浮いていたとすれば、そのふた品の持ち主たる女が、少なくもこの毒殺に重大な糸を引いていることは確かです。
服装もしらべてみると、紋服、はかま、べつにこれといって変わったところはないが、腰に二つのさげ物がある。
一つは城内出入りのご門鑑。これがあるからには、お城仕えをしているものであることが明らかでした。
いま一つは、印籠《いんろう》のようなさげ物です。しかし、印籠ではない。形は丸筒、生地は竹、塗りは朱うるし、緒締めのふたがあって、中をしらべてみると、刀剣の手入れにはなくてかなわぬ紅絹《もみ》の打ち粉袋がはいっているのです。――同時に、名人のさえた声が放たれました。
「お刀番でござりまするな」
「なに! お刀番?――お刀番出仕のものなら、てまえ知らぬでもない。死に顔をよく拝見いたしましょう」
三宅平七が進み出て、形相もぶきみに変わった死に顔をしげしげ見し
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