疑問はその一点。解決のかぎもまたその一点。
「たまらねえね。こういうなぞたくさんの変事になると、知恵蔵もたくさんあるが、切れ味もまたいいんだから。え? だんな。遠慮はいらねえんだ。ちょっくら小手しらべに、正宗《まさむね》、村正《むらまさ》、はだしというすごいところをお目にかけなせえましよ」
「うるさいよ」
「へ……? これっぱかりしゃべってもうるさいですかね。お将軍さまのお寝間へちけえと思って、大きに遠慮しているつもりなんですがね。あっしがものをいうと、何をしゃべってもうるさいですかね」
「それがうるさいというんだ。黙ってろ」
 しかっておいて、静かにあごをなでながら考えつめていたが、一筋一筋となぞのもつれ糸がほぐれだしたとみえて、ぼんやりとたたずんでいた足軽たちのところへ穏やかに声が向けられました。
「大小の重みぐらいで今までこの死体の浮き上がらなかったのがいかにも不思議、どろへはまっておったと申されたが、どのくらい深くうずまっておりましたか」
「一尺ほどでござりました。いや、もっと深かったかもしれませぬ。両方のたもとに大きな石がふたつずつはいっておりましたのでな、頭をさかさま
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