なことを断ずるごとく言い放ちました。
「ならば、下のこの濠を捜すより、上の濠をお捜しなさるが早道、あちらの水底をさぐってごらんなさりませい」
「なに、それはまたどうしたわけじゃ。上の濠《ほり》をさらえとはなにゆえじゃ」
「下の濠にこのふた品が浮いていたゆえ、入水《じゅすい》の者はこの水底に沈んでおると見るはおしろうと考え、あのとおり水門から今もなおこちらへ濠水が流れ込んでおりますからには、このふた品もまた上から流れてきたものかもしれませぬ。右にすきあると思わば左をねらえとは剣の極意、道こそ違え吟味|詮議《せんぎ》もまたそれが奥義でござります。右門のにらんだことに狂いござりませぬ。ものはためし、あちらを捜させてごらんなさりませい」
むっつり流十八番のからめ手詮議です。濠を替えてくぐらせてみると、果然ひとりが浮きあがりざま、けたたましく叫びました。
「ありました! ありました! たしかに死骸《しがい》がござりまするぞ!」
「なにッ、あったか! やはり女か!」
「しかとはわかりませぬが、どろへ深くはまっておりまして持ちあげられませぬ。みな手を貸せい!」
場所は水門から上へ二間ばかり、お城
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