おふくろと、その兄の宗左衛門《そうざえもん》でござんす」
「闇男本人の友次郎とやらはかかわりないか!」
「あるもないもねえ、友次郎だんななんぞ、もうとっくに死出の旅へお出かけですよ」
「なにッ。この世の人でないと申すかッ」
「ひと月もまえにお死になすったんですよ。それもただ死んだんじゃねえ。お直参が情けないといえば情けない、おかわいそうにといえばおかわいそうに、首をくくって死んだんでござんす。闇男のうわさのひろまったもそれがもと、なつを殺すようになったもそれがもと、なにもかも宗左衛門と友次郎だんなのおふくろが、悪党働きやがったから起こったことなんでござんす」
「どんなわるだくみじゃ」
「どうもこうもねえ、あっしゃ渡り中間だから主筋の悪口いうってえわけじゃござんせんが、お旗本のうちにも、ああいう名ばかりお直参の、うすみっともねえ根性の人がいるんだから、世間はさまざまですよ。もっとも、事の起こりゃただの二百石という貧乏知行のせいですがね。お賄い方なんてえお役向きからしてが、はぶりのいいもんじゃねえ。しかし、ひと粒種の友次郎だんな、いかにも男がようござんしたからね。上役の、お賄《まかな》い方
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