りか、といってきいてるんだよ」
「バカにおしなさんな、こんなものぐれえわからなくてどうするんですかい[#「どうするんですかい」は底本では「どうするですかい」]。まさにまさしく、こりゃ墨田の言問《こととい》ですよ」
「偉い! 偉いね。おまえにしちゃ大できだが、どうしてまたこのだんごを言問と判じたんだよ」
「つがもねえ。お江戸にだんご屋は何軒あるか知らねえが、どこのだんごでも一くしの数は五つと決まっているのに、言問だんごばかりゃ昔から三つと限っているんだ。だから、この絵のところへ来いとあるからにゃ、墨田の言問へ来いとのなぞに決まっているんですよ。どんなもんです。違いましたかね」
「偉い! 偉い! 食い意地が張ってるだけに、食べもののことになると、なかなかおまえさん細っかいよ」
「えへへ。いえ、なに、べつにそれほど細かいわけでもねえんだがね。じつあ、六、七年まえに、いっぺんあそこで食ったことがあってね、そのときやっぱり三つしきゃ刺してなかったんで、ちくしょうめ、なんてけちなだんごだろうと、いまだに忘れずにいるんですよ。べらぼうめ、さあ来いだ。食いものの恨みゃ一生涯忘れねえというぐれえなんだか
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