、――それというのも、あの六地蔵|菩薩《ぼさつ》のお施主たちがたいへんもなくあちらにお力添えくださるからのことでござります。もともと新寺の開運地蔵としてお祭り申しあげるよう、特にあの六体を分けてやったものでござりますゆえ、そのお施主たちがわがことのように、あちらの寺へお力添えなさるはあたりまえでもござりまするし、別してねたむところなぞないはずでござりまするが、これこそほんとうに天魔に魅入られたというのに相違ござりませぬ。新寺の栄えるは、ひっきょう、あの分かれお地蔵六体の寄進者たちがあちらの檀家《だんか》となってついていったからじゃ、もったいないが、お地蔵さまをおけがし申したら、六人の施主たちも憤るにちがいない。いいえ、盗み出されたり、あんなところへさらしものにされるというのも、みんな住持の不始末からじゃ、不徳からじゃ、だいじに祭ってくれぬゆえ、人目に恥をさらすようなことにもなるのじゃとお怒りなさるは必定、さすればきっとあちらを見捨てて、もとどおりこの本寺の檀家《だんか》になってくださるだろうと、ついあさはかなことを考えたのが、こんな人騒がせのもとになったのでござります。仏弟子にもあるま
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