じき不浄のねたみ心、まことになんとも面目しだいもござりませぬ……」
「なるほど、そうでしたかい。よく申しました。ちっと心が濁りすぎましたのう」
「は……お会わせする顔もござりませぬ。かくならば覚悟いたしましてござります。わたくしは、このなさけない蓮信《れんしん》は、どうしたら、どう身の始末つけたらよいでありましょう」
「罪を犯したとお思いか!」
「思う段ではござりませぬ。お地蔵さまをおけがし申した罪、そねんだ罪、あの四人をそそのかした罪。――みな罪ばかりでござります。どう……どう身の始末つけたらよろしゅうござりましょう」
「お行きなされい! 寺社奉行さまが、さばきのむちと情とを持って、お待ちかねでござろうわ!」
「なるほど、わかりました……ようわかりました……ならば、自訴しに参りまするでござります……」
 哀々とした声でした。悲しげに、寂しげにうなだれ沈んで、とぼとぼと表山門から蓮信が出ていこうとしたのを見ながめると、名人右門、やはりまた情けのむちを持ったあっぱれ男です。
「その乱れた姿で表山門はくぐりにくかろう。いいや、人目にかからば悲しかろう。裏門からお行きなされい。何もかもこの右
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