》をしたのも、今になって思い直してみりゃ気に食わねえんだ。かばうかばうといいながら、その口で弟弟子の根も葉もない悪口を訴えがましくいうやつがあるかよ。ホシはあれだ。来な!」
「ちげえねえ! べらぼうめ、どうするか覚えてろ」
 さっと駆けだした伝六を露払いに、あとからゆうぜんとして訪れたところはその一真寺です。
 見ると、ことの雲行きを探ろうためにか、それともそしらぬ顔を造ろうとのためにか、そこの本堂横の広庭をぶらぶらさまよっていたのは、だれでもないあの蓮信でした。
「ご坊ッ」
 つかつかと近よりざまに、莞爾《かんじ》としながらうち笑うと、ずばり浴びせかけたものです。
「むっつり右門の生地を見せてやらあ。ちっと伝法でいくぜ。ネタは悉皆《しっかい》あがったんだ。すっぱりどろを吐きなよ!」
「な、な、なんでござります! 不意に何を仰せでござります」
「しらをきるねえ! そんな見えすいた仏顔は古手だよ。ちゃんとその目にもけえてあるじゃねえか。五十両であの四人を買いましたと、あっさり白状すりゃいいんだ」
「…………」
 ぎょっとなりながら、争われぬ狼狽《ろうばい》の色を見せて、さしうつむいたその
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