一つずつ出てきたのがなにより証拠。その酒だるから毒酒の出たのも動かぬ証拠。それでもなおがてんがいかずば、そこのふたりの刀をよく調べてみろよ。あっちとこっちのふたりを、それぞれ一刀切りにしたときの血くもりが、どれかの刀身に見えるはずだよ」
「はてね、――よッ。ありますよ、ありますよ。この右のやつの刀に、まさしく血のりの曇りがありますよ」
「ありゃあもう文句はあるめえ。すなわち、身から出たさび、欲がさせたしわざの果てさ。残るところは、どこのお寺の坊主がこの四人を欲で買ったたか、五十両包みの出どころ詮議だけだよ」
「ね……! まるで神さまみてえだね。頼んだその坊主はだれですかい」
「すなわち一真寺! きのうのあの紫数珠の蓮信坊だよ」
「つがもねえ。どこにそんな証拠があるんですかよ」
「五十両の包み紙から、ぷーんと強く線香のにおいが散っているじゃねえかよ。しかも、まっさきにばらされたあっちの死骸が、いま一真寺から出てきたところでござりますといわぬばかりに、裏門から一本道をこっちへ向いて道なりに倒れているじゃねえか。きのう、なんのかのとおいらに末寺の兄弟|弟子《でし》のあの美男上人の讒訴《ざんそ
前へ 次へ
全48ページ中41ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング