わいわいとうち騒いでいるさいちゅうでした。
 押し分けながら近づいていってみると、なるほど四つの浪人者の死骸《しがい》が、その細い道の三町ほどの間に、点々として倒れているのです。しかも、不審なのは倒れている四人のその位置なのでした。
 一真寺の裏門から一町ほど離れたところにひとり。
 ――みごとな一刀切りの前傷うけて、頭をこちらにしながら、道なりに長々とあおむけにのけぞっているのでした。腰のものは抜き合わせた様子もないのです。
 そこから一町ほどこちらに離れてふたり。
 ――ひとりはあおむけに、ひとりは伏して、道へ横に倒れながら、この二つが伝六のいった不審な死に方の死骸であるとみえて、いかさまふたりとも血のり一滴見せずに倒れているのでした。しかし、奇怪なことには、そのむくろの近くに、酒だるが一つころがっているのです。
 そこからさらに一町離れてひとり。
 ――一真寺の近くの最初のひとりと同様、みごとな一刀切りの前傷うけて、不思議なことにこれは頭をまんなかに倒れているふたりのほうに向けながら、同じく道なりに長々とうっ伏しているのでした。腰の物もやはり抜き合わせた様子もないのです。
「ね…
前へ 次へ
全48ページ中35ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング