州、ご本山よりご下向のご番僧説教日割りは、左記のとおり相定め候《そうろう》につき、お心得しかるべく候。
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壱、参、五、七、四カ日に当山。
弐、四、六、八、四カ日は興照寺。
ただし朝五ツよりのこと」
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「あにい!」
 読み下すや同時です。ふいっと名人が不思議なことを尋ねました。
「きょうは幾日だっけな」
「へ……?」
「四月の何日かというんだよ」
「はてね。お待ちなさいよ。おついたちの赤のご飯をいただいたのはおとついだから、ええと――ちきしょう、三日なら三日といやいいんだ。まさしく四月の三日ですよ」
「ウフフ。そうかい。道理でな、蓮信上人《れんしんしょうにん》、忙しくなりだしたとのたまわったよ。おいらも急に忙しくなりやがった。――来な!」
「ど、ど、どこへ行くんですかよ。いやだね、また急に伝六泣かせをお始めですか、三日なら何がどうしたというんですかい」
「決まってらあ。あそこの立て札にもちゃんと断わってあるじゃねえかよ。三日ならばこっちの説教日、こっちが説教日ならば川向こうは暇の日なんだ。蓮信上人、今なんといったのかい。からだに暇さえあれば、
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