さままでも盗まれまするよ」
「聞き捨てならぬことを申されまするが、では、あちらのお住職はご行状がちと――」
「悪い段ではござりませぬ。いかに修行の足らぬ者でござりましょうとも、あれでは少し度が過ぎましょうわい。あはは、河原者《かわらもの》ならば男の良いのがとりえでござりましょうが、み仏に仕える者ではな、かえってじゃまでござりましょうよ」
「と申しますると、何か浮いたうわさでも――」
「うわさどころか、兄弟子《あにでし》ながらこの蓮信も、あれではちと目に余るくらいでござります。同じこのお寺で修行をつづけて、本寺、末寺と分かれた仲でござりますのでな、ことごとにかばいだてもいたしまして、悪いうわさの口端《くちは》に広まらぬようにと、ずいぶん気をつかってでござりまするが、あれこそまったく女地獄、このごろではどういう素姓の者やら、年上のあばずれ者らしい女とこっそり行き来をつづけて、いいえ、もう近ごろはからだに暇さえあると女を寺に引き入れて淫楽三昧《いんらくざんまい》でござりますのでな、さすがのてまえも、ほとほとあいそをつかしているくらいでござります。ちょうどいいさいわい、あなたさまからもきびしく
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