ょう者ともども、うしろへ回ってみると、なるほど女名まえがどれにも彫りつけてあるのです。
「本所外手町弁天小路たま」というのが一基。
「深川|安宅《あたか》町大口横町すず」というのが一つ。
「日本橋小網町|貝杓子店《かいじゃくしだな》すえ」というのが一体。
「浅草花川戸町戸沢長屋しげ」というのが一つ。
「深川|摩利支天《まりしてん》横町ひさ」というのが一基。
「日本橋|亀島《かめじま》町紅梅新道まつ」というのが一体。
しかも、六地蔵ともに寄進の年月はついおととしの、日もまたそろって同じ灌仏会《かんぶつえ》のある四月八日でした。
故意か、ただのいたずらか、なぞを解くかぎはここに一つあるにちがいない!
読み終わると同時に、きらりと鋭く名人の目のさえたのは当然。声もまた鋭くさえて、今なおちんまりとすわったままでいる珍念のところへ飛びました。
「そなた、もとよりこの女たちの素姓、お知りでありましょうの」
「いえ。あの……あの珍念はまだ年がいきませぬゆえ、女のことはなに一つ知りませぬ。でも、あの……」
「なんじゃ!」
「そのかたたちはどのような素姓やら少しも存じませぬが、うちのお寺にはたいせ
前へ
次へ
全48ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング