ら分かれてまいりましたとき、新寺のお守り仏としていっしょにいただいてまいりました分かれ地蔵でござります」
「といいますると、では、そのご本寺の一真寺とやらにも、これと同じようなお地蔵さまがおありなさるのでござりまするな」
「あい。あちらにも残りのお地蔵さまがやはり六体ござります。合わせて十二体ござりましたゆえ、十二地蔵とも、また女人《にょにん》地蔵とも申しまして、一真寺においでのころから評判のお地蔵さまでござりました」
「なに! 女人地蔵とのう! それはまたどうしたわけからでござります?」
「あちらの六体のお施主も、これをご寄進なさいましたかたがたも、みんなそろうて女のかたばかりでござりますゆえ、だれいうとなく一真寺の女人地蔵といいだしたのでござります。うそじゃと思うたら、おじさんも字が読めるはず、お地蔵さまたちのお背中をようごろうじませ。ちゃんとお奇特なかたがたのお名まえが刻んでござります」
「はあてね。べらぼうめ。おらだっても字ぐれえ読めるんだ。どれどれ、どこにあります? え! ちょいと! 手もなく読んでやるから、どこに彫ってありますかい」
 出ないでもいいのに、しゃきり出たあいき
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