ッフフ。あきれたもんだね。生意気に生きていらあ。ね、ちょっと。こんなにこまっかくとも、ちゃんと一人まえにものをいうんですよ。ようよう。笑やがった、笑やがった。気味がわるいね。え! ちょっと! どっちにしてもただものじゃねえですぜ。あつらえたって、こんな小造りなのはめったにできねえんだからね。なんぞこの豆和尚にいわくがあるにちげえねえですぜ」
まったく小さい。澄ましてちんまりとすわっているところが、またいかにも子細ありげに見えるのです。もちろん、名人もいいようのないいぶかしさに打たれて、小者をさし招くと、こっそりきき尋ねました。
「あれは?」
「どうもそれが少しおかしいんですよ。ご詮議のじゃまになるからどけどけといって、どんなにしかっても、あたしがいなくなりますとお地蔵さまが寂しがりますゆえどきませぬと、このように言い張って、先ほどからあそこにちんまりとすわったままなのでござります」
「ほほう。変わったことを申しますのう。何かなぞを持っておるやもしれませぬゆえ、当たってみましょう。――お小僧さん、こんにちは。いいお天気でござりますな」
「はい、こんにちは。わたくしもさように思います」
くるくると目をみはりながら、涼しい声でいってのけて、いうことがまた禅味たっぷり、弁舌がまた小粒に似あわず気味のわるいくらいにさわやかでした。
「おじさん、遠いところをご苦労でございまするな。お寺ならばお茶なとさし上げられますのに、このようなところではおもてなしもできませず、おきのどくでござります」
「あはは。これはごあいさつ、痛み入りました。お寺ならばと申しましたところをみますと、では、そなた興照寺のお小僧さんでありましょうのう」
「あい。珍念と申します」
「ほほう、珍念さんとのう。姿に似合うたよい名でありますこと。お年は?」
「九つでござります」
「去年は?」
「八つでござりました」
「来年は?」
「十になるはずでござりますけれど、なってみねばわかりませぬ」
「あはは。なかなかりこうなことをおっしゃる。ほんとうにそうでありますのう。あした病気にでもなりましたならば、み仏のおそばへ行かねばなりますまいからのう。そのおりこうなそなたがまた、どうしたわけでお役人のおさしずもきかず、そんなところにすわっているのでござります?」
「いいえ、あの、お役人さまのおさしずにさからったのではござりま
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